でんぷんを深掘りしている関係で、今回はサクサク天ぷらを作る衣の話を持ってきました。
みなさん、天ぷらって作ってますか?
「揚げ物は面倒だし、うまくいかないし最近はスーパーで買ってるわ」という方が多いのではないでしょうか?
安心してください、私もその一人です。
天ぷらは敬遠されがちかもしれませんが、唐揚げは作るって方は多いかもしれません。
そんな方にも参考になるでしょう。
天ぷら屋のてんぷら
天ぷらと鮨って素材の誤魔化しがきかない、素材で勝負する生と加温調理の双璧だと思います。
天ぷら屋が作る天ぷらって、油で揚げているのに軽くていくらでも食べられます。
不思議です、あの天ぷら屋の天ぷらって?何?
店主が
「やれ、塩や抹茶塩で食ってくれ」
「レモンを搾って食ってくれ」
とかおせっかいで言ってくるのも、最も素材が美味しく食べて欲しいため。
はいはい、そうしますよ。
さて、そんな天ぷら屋のてんぷらに負けない天ぷら、そして中華料理屋で食べるクリスピーな唐揚げが自宅でできるかも?って話です。
小麦粉、片栗粉、米粉などで、どれが一番サクサク天ぷらになる?
でも、市販の天ぷら用粉では無いです。
普通の小麦粉や片栗粉、米粉などで、どれが一番サクサク天ぷらになるかって話になります。
もちろん唐揚げにも使えるでしょう。
これであなたも天ぷらや唐揚げマスターになれるかも!?
サクサク感に影響与えるでんぷん
竹田靖史さんはでんぷんの研究家で、彼はある文献の中で天ぷらのサクサク感について報告しています。
でんぷんによって、サクサク感が変わるそうです。
その研究結果のご紹介になります。
どの粉使う?
竹田靖史さんが天ぷらサクサク試験の衣に使った粉は多くあるのですが、その中で小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、片栗粉(じゃがいも粉)の4つの粉について報告します。
衣に使う粉は主にでんぷんから成るので、そのでんぷんを多く含む食物を表にしてみました。
その表の中で4つの粉、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、片栗粉(じゃがいも粉)を色付けしています。
ちなみにこの表と次の表は白鳥麗王がでんぷん全体を俯瞰したいので作成したオリジナルになります。
3大穀物の米、小麦、とうもろこしは同じイネ科なんですって。
知らんかったわ~
グルテンがあるのも麦類だけと言われています。
ちなみにでんぷんはこの表にあるように炭水化物の1つです。
この前取り上げた難消化性でんぷんレジスタントスターチRS1~4も表の中にあります。
サクサク感=衣から抜ける水分量
さて文献によれば、サクサク感は、衣から抜ける水分量に比例することが分かったそうです。
つまり、衣から水分が多く抜けたらサクサクになる。
水分が抜けなかったらサクサク感が無い。
と言うことだそうです。
「なるほど、ストレートだ」
「目からうろこだな」
この理屈は納得できます!
そりゃ、水分が抜けたらサクサクになりますわな。
せんべいが湿ったらサクサクが無くなる。乾いたらサクサクになる。
ちょっと雑いがそんなイメージでしょう。
しかしサクサク感は人それぞれ。
ある人はサクサクと感じるが、そうでもないと感じる人がいて千差万別です。
サクサク感は官能評価で人によるバラツキはあるでしょうが、竹田靖史さんがちゃんと文献にしているので、信用しても良いと思われます。
衣の水分飛散率とサクサク感のグラフ
その竹田靖史さんが、天ぷら衣の水分飛散率とサクサク感との関係を調べ、文献中の図10グラフとしています。
そのグラフを見やすいように改変したグラフが下のグラフです。
横軸がサクサク感で数字が大きいほどサクサク感があることを表します。
これは食べた人が感じたサクサク感、官能評価値です。
縦軸は衣からの水分飛散率です。
数字が大きいほど衣から水分が飛散することを意味します。
このグラフより
「サクサク感は水分飛散率と比例関係にある」
ことが分かります。
こんなグラフが見たかった!
最もサクサク感が強かったのは、トウモロコシ粉。
2番目が米粉です。
3番目が小麦粉になります。
4番目が片栗粉になります。
最後おまけにさつまいも粉のデータも載せます。
これが一番サクサク感が無いです。
でんぷんを穀物由来とイモ由来(イモは本当は「塊茎」と呼ばれるそうです)に分けると、穀物由来のでんぷんの方がサクサクになると言われています。
焼き芋も焼くと水分でねっちょりな食感になるので、なんとなく納得できますね。
サクサク感を出すには
この研究からサクサクの天ぷらにしたいなら、トウモロコシ粉や米粉がお勧めなことが分かります。
トウモロコシ粉や米粉にはグルテンが無いことも影響しているようです。
米粉はサクサク感を出すのに知られていますが、トウモロコシ粉がその上とは!
知らんかった。
しっとり感を出すには
片栗粉は水と仲が良いので水とくっついたら離さない。
ゆえにサクサクの食感にならず、しっとり(べちゃ)とした食感になります。
片栗粉が容易にとろみをつけること、じゃがいもを煮るとドロドロに溶けることなどから実感できるのではないでしょうか?
もちろん各種の粉をブレンドして試してみるといいでしょうね。オリジナルな衣が完成するのでは?
小麦粉の注意事項
小麦粉に水を入れるとグリアジンとグルテニンという2つのタンパク質が水と結合してグルテンが形成されます。
粉の状態ではグルテンは存在しないのですが、みんなめんどくさいので、グルテンと言ってます。
もちろん、天ぷら用はグルテンが少ない薄力粉になります。強力粉は使わないように。
グルテンができると粘くなり、サクサクの食感にならないので、衣を作る時には冷水であまりかき混ぜるなと料理本にも書いてますね。
天ぷら液を入れたボールも氷を入れた大きなボールに入れて低温を保持するようです。プロは。
唐揚げの場合
唐揚げも天ぷらと同様でしょう。
中華料理屋でクリスピーな唐揚げを食べることがあるかと思いますが、トウモロコシ粉や米粉を使っていると思われます。
逆にウエットな唐揚げにしたい時には片栗粉でしょう。
以上 サクサクの天ぷらを作る衣についての話でした。
芸能人格付けで騙せる天ぷらができるかもよ?
私はまだ未トライですが、試してみてください。